2009年3月3日(火)ドイツ、プロクリマ社を訪問しました。
プロクリマ社は、防湿、気密材を製造販売しています。
ハイデルベルグ市の郊外にある、プロクリマ社。
ここは、主に事務関連の仕事やミーティング、プレゼンテーションなどを行う施設です。

写真右手には、気密状況を体験できる施設があります。
プレゼン中の、ノベルト・バウマン氏(左)とイェンス・リューダ・ヘルムス氏(右)。

(Ⅰ)

プロクリマ社は、1982年に設立されました。
設立当初は、エコ断熱材の代理店でしたが、窓などの気密に注目し気密材を扱う仕事を始めました。
当時ドイツには、普通の気密材は有りましたが、プロクリマ社は独自の気密材を作り出しました。
プロクリマ社独自の気密材に付いて詳しく尋ねると、紙製の気密材との答えでした。
サンプルを見せてもらうと、正しく紙製です。

左側:紙質で出来た防湿・気密材。
この気密材は当時の製品から改良を重ね、現在販売されている製品です。
何故気密材が紙製なのか?お分かりでしょうか。
その答えで、如何にドイツが、建築物理学により建築材料が進んでいるかが分かります。
説明では、1980年代当時から、湿気移動は室内から室外への移動以外に、室外から室内への移動が有る事を理解していたと言うのです。
湿気移動は、条件により、室外と室内間の移動を繰り返しているのです。
その為に、壁や屋根内間で湿気が何れの方向への移動を起こしても、その移動を一方側のみで妨げる事での弊害を理解していたので、その移動を完全に妨げない紙製の気密シート材としたのです。
この製品の名前は、DBシートと呼ばれ、DB+(プラス)として、現在もドイツ国内で販売されています。
sdバリュー値は、2.5mの性能です。(sdバリューに付いては、後ほど説明します。)
1980年代当時のドイツの方が、湿気移動に付いての究明は、現状の日本より進んでいたと言えます。
何故ならば、現在日本では室内から室外への湿気移動と限定した防湿・気密材しか販売されていません。
夏など、屋外が高湿になり屋外から室内へ湿気が移動する事を、理論上解決する手立ての出来る材料は、現状日本国内には有りません。
また、その様な理論を唱える研究者もいません。
北海道など梅雨が無い様な気候地域では、その影響は余り出ませんが、本州などの地域ではその湿気移動に対する方策が必要です。
現状で使用されている、ポロエチレンシートなどを室内側に施すと、夏場の屋外が高湿になる状態では、室外から室内側に湿気移動が有ります。
そうすると、ポリエチレンシート面で湿気移動が止まり、高湿な面が出来ます。
それは、湿気状態から結露状態へと変化し、構造材や断熱材へ吸収されます。
つまり、普及している防湿層を設けると、冬場良好な役目をする材料ですが、夏場などには、逆行する役目を果たす材料と成るのです。
その為、本州などの地域では、防湿気密シートの施工は殆ど行わす、断熱面で気密を取る工法が主流と聞きます。
しかし、その様な施工方法の、ウレタン吹き付け工法などでは、経年変化などで構造材との間に隙間が生まれ、気密性能が落ちる事に成ります。
板状断熱材にテーピングによる施工でも、細部の気密は完全には出来ません。
また、防湿層の無い床、壁、天井部では、室内側から断熱面まで容易に湿気は到達でき、その結果断熱の弱い部分や構造金物など熱伝導の高い部分など温度の低い部分で容易に結露を起こします。
やはり、室内側に防湿気密層を設け、その部分で室内からの湿気移動を極力少なくさせる方が、理論的で確実です。
その為には、室外から室内への湿気移動も考慮した材料が必要に成るのです。
(Ⅱ)

ドイツでは、1985年に断熱令が出され、それが気密材の転換期と成りました。
オイルショック後、気密性能が劣ると省エネに成らない事が分かり、気密材への関心が高まりました。
(Ⅲ)

(Ⅳ)

(Ⅴ)

(Ⅵ)

(Ⅶ)

(Ⅷ)

(Ⅸ)

(Ⅹ)

ポリスチレンシートは、透湿抵抗は一定です。
(ポリスチレンシート厚0.2㎜のsd値は50mです。)
その為、夏型結露の様に外部側から室内側に湿気が移動する状況下では、その透湿抵抗が弊害と成ります。
湿気は常に移動方向を変えますが、ポリスチレンシートはその条件に合わせる事は出来ません。
ここで、ポリエチレンシート透湿抵抗を表す数値に、sd値と言う耳慣れない用語が出てきます。
sd値は、熱的な影響を考えない場合の、材料の湿気通しにくさを空気層の厚さ(m)で表したものです。
このsd値に付いて、インターネットで国内検索しても、検索結果に掛かりません。
国外のサイト上には、sd値に関する内容が沢山有ります。
つまり、国内ではこのsd値は、湿気の抵抗値としては使われていないものなのです。
しかし、空気の層の厚さ換算での表現は、大変分かり易く材料同士の対比にも大変便利です。
こうした、材料への理解を分かり易く表現し、その違いを見て材料の選択できる事が、必要だと思うのですが日本ではそうでは有りません。
また、建築環境書籍等にもこのsd値は出てきません。
唯一、お茶の水女子大学名誉教授 田中辰明工博、柚本 玲博士が書かれた『これからの外断熱住宅』に、sd値に付いて載せています。
田中先生は、長くドイツと学術的交流を重ね、ドイツの建築物理学を学ばれた数少ない日本の教授です。
(XI)

一方、インテリジェント調湿シートのインテロは、室内と屋外の相対湿度により、透湿抵抗を変化させます。
つまり、冬の様に室内側の相対湿度が高い時は、透湿抵抗を高め(sd値10m)ます。
夏の様に、屋外側の相対湿度が高い時は、シートの透湿抵抗を弱め(sd値0.25m)変化させるのです。
内外の相対湿度に合わせて、40倍の密度変化をする事に成ります。
このインテロのsd値変化は、夏型結露を克服する材料として画期的なものです。
気密を確実に行い、防湿性能を有しながらその材料変化で、気候変化に対応しその微妙な湿気移動に追従できる唯一の材料と言えます。
(XII)

(XIII)

(XIV)

無暖房住宅・外断熱の今川建築設計監理事務所: 2010年06月16日|ページの 先頭へ|